「ロベルト・シューマン的な?」と聞かれた話【子どもの問いシリーズ】
自分の良いところを探したり考えたりするというちょっとした課題があり、ぼんやりしているところに、小学生の子が帰ってきました。
そこで子に
「お母さんの良いところってどこだと思う?」
と聞いてみたところ、
「何それ、急に」
と言いつつ、
「まあいろいろあるけど、まずはオレを生んでくれたってことだよね」
と軽く答えられてしまいました。
ドーン。
あまりの衝撃に呆然としていると、
「え?逆にお母さん、オレ生まれないほうがよかったと思ってんの?」
と聞かれてしまい、
「ちがうちがう、それは全然ちがう!」
とこちらが狼狽する展開に。
少し気持ちを落ち着けてから
「いやあ、うれしくて、ちょっとびっくりしてさ…」
と言うと、今度はこちらを指さし
「それ、その顔だよ。良いところ」
と言われる始末。
余裕あるな~
これだけでも私にとっては衝撃的事件、「完敗」の二文字が頭をよぎったのですが、その後かさねて子が
「で、なんでそんなこと聞いてきたの?」
と尋ねてきました。
うちでは、私の抱える病気について、子どもにもオープンにするスタンスでやっています。
子どもたちにあまり負荷をかけたくはないのですが、特別なことでもないと知ってもらいたいということもあり、パートナーのウネリと工夫して少しずつ伝えるようにしています。
「きょう病院でそういう話になったからさ。考えてたの、自分の良いところ」
「へえ。それが病院がすることなの。お母さんの病院は変わってんな~。で、どうだったの、調子は?」
「良くはなるみたいだけど、だいぶ時間はかかりそうだってさ」
私が答えると、
「え?年内無理なの?つらいね~」
と言われてしまい、苦笑しつつ
「まあ、心の病気だからね。簡単にいかないみたいよ」
と言ったところ即、
「ああ、ロベルト・シューマン的な?」
と打ち返してきたので、不本意ながら、またも絶句してしまいました。
「ちょっと、シューマンそこまで詳しくないんだけど…」
というと、待っていましたとばかりに、子の口からシューマンの生涯が語られました(略)。
完全に子に流れを持っていかれたかたちです。
で、話を聞いているうちに興味が湧いてきてしまい、スマホでシューマンについて検索していると、
「お母さん、調べてんの?」
と言われ……
「そうだけど」
としぶしぶ答えると、
「裁判のことは書いてある?裁判!クララとの結婚をクララのお父さんが大反対してさ、裁判にまで発展してるんだから!書いてある、それ?」
はあ……。あった、あった。Wikipediaには、書いてありましたけど。
「ねえそれ何で知ったの?」
と尋ねると
「ちゃぐりん」
ーーまたか。「ちゃぐりん」おそるべし。
みなさんはご存じですか?「ちゃぐりん」のことを。
私は福島に越してきてその存在を知りました。ごく簡単に紹介するとJAグループがつくっている子ども向け雑誌で、そのなかに歴史上の人物を描く漫画コーナーがあるわけです。
近ごろ、やけに歴史ネタを持ち出してくるので感心して聞いてみると、いつもソース元は「ちゃぐりん」。加藤清正もちゃぐりん。シューマンもちゃぐりん。阿部末吉もちゃぐりん(←知ってます?「是はうまい」って。私はわからなかったです)。
「『ちゃぐりん』で興味持ったら、『ちゃぐりん』以外でも、もっと調べてみなよ」
と一応声がけはしていますけど、まあ
「ああ」
って薄ーい返答ですね。今のところ。
しばらくしてまた子のほうから
「お母さんの病院さ、大丈夫なの、それで」
というので、
「どういう意味?」
と聞き返すと
「前にもリンゴの木の絵描いたとかっていってたけどさ、そういうことで治っていくわけ?」
というので
「ああ、それは検査でね。心のなかの様子がわかったりするようなんだよ」
と答えると、今度は
「ええっ!それはやだな。オレ、お母さんの心が誰かに見られちゃうなんてやだよ」
なんて言うのです。
いろいろと考えさせられる一日でした。
ふざけた文体ですが、この内容は私にとっては真剣そのものです。記録しておきます。
時刻について【子どもの問いシリーズ?】
先日の夕方、3年生の子どもがふと尋ねてきました。
「日本の時刻っていうのは、兵庫県明石市が基準みたいなことが教科書に書いてあったんだけど」
ーー以下、ウネリによる日本標準時や世界標準時についての説明、略。
「へえ(←興味なさそう)。まあ、それはわかったんだけど(←わかってなさそう)、うちの時計は何で合わせてんの?テレビ?スマホ?」
「その時々だけど、今はスマホ見て、が多いかなあ」(私)
「で、そのスマホは何に合わせてるわけ?なんかわかんないけど、どこに合わせていってもズレてく気がするんだけど?」
「そのズレを調節する機能はついてるわけ?」
などなどが子どもの問いの内容です。
その感じわかる~!!!けど私にはちょっと説明困難。
というわけで、以降説明はウネリにまかせ、私は買い物のため会話から離脱しました。
その後どこまでどういう話がなされたかは不明です。
一切の難しい説明を放棄し「そんなこと考えてるんだなあ」というしみじみ感だけを持って家を出た私は、スーパーまでの車中、さまざまなことを思っていました。
そもそも、この会話以前に子どもは
「引っ越してきてからよく思うんだけど、こっちではみんな集まりが早くない?集合時刻の10分前にはもう全員来てる感じでさ。油断してると、いつも遅刻したみたいになるんだけど」
と言っていました。
それについては
「わが家の標準時の設定がたぶん、だいぶゆるゆるなんだよ~」
と思わないでもありません……。
ことウネリに関しては、悠久の時のなかを生きているようなところがあり、近くで見ている私がハラハラすることも多々あります。
近ごろはだいぶ慣れましたし、私が多少せっついたところで
「大丈夫だよ。やきもきさせちゃってごめんね」
みたいな肩透かしを食らうのみですから、しかたがありません。
もうだいぶ前の話ですが、ある時私がウネリに
「うちの時計、10分進めておこうか」
と言ったことがあります。その時ウネリは心底不思議そうな顔で
「なんのために?」
と聞き返してきました。
「その時計の時刻に沿って動いたら、10分余裕ができるじゃん」
といった返答をするとウネリは、軽く驚いているような感じで
「ええ?それ全然わかんないな。だって10分進めてるってこと、自分でわかってるんでしょ?どうしても『まだ10分前だから大丈夫』って思っちゃわない?」
というようなことを言うのでした。
私は
「そこは自分でわかっていつつもこの時計の時刻に合わせるって感じなわけよ。仮の時刻設定みたいな」
と苦しい返答をしましたが
「ええ~無理だなあ。それはちょっと…そうはどうしても…自分には、できない……」
と言うのでした。
私はウネリとのこの会話が好きで、時々思い出すことがあります。
こういう話をしているのって楽しいなあ、と思ったのを、とてもよく覚えています。
なんということはないのですが、なんとなく書き留めておきたくて。
あれをやればこれを忘れて
こんにちは。ウネラです。
最近少しせわしくしておりました。
前回お知らせした企画の開始や、新しいすてきな出会い、ウネリの過労死防止シンポジウム、「ウネリウネラ」サイトリニューアル、俳句、子どもの骨折、さまざまな子ども関連行事、自分の通院…などなど。盛りだくさんです。
で、タイトル通り、「あれをやればこれを忘れて」な毎日を過ごしています。
先日はいちばん小さい子の保育園の懇談会を、完全に失念。
あれこれあげていけばキリがないのですが、その失敗の数々すら、近ごろは覚えていられないというありさまです……。
いま私をせわしくさせている一番の鍵。それは、
「ウネリウネラ」が出版業をはじめたから
なんです~
年内に1冊刊行予定、なんですが、その準備がいよいよ佳境に入ってきました。
間に合うのか?
出版について右も左もわからないなか、どのようにしてそうなったのか、というあたりも、ブログで書き始めましたので、よければぜひお読みください。
↓
サイトをいじっていれば、本のほうのデザインソフトの操作を忘れ、本をやっていると、サイト(ワードプレス)のあれこれを忘れる……の繰り返し。。。
でも「つくる」作業はとても好きなので、楽しいです。いろいろみなさんに聞いたり、助けてもらったりしながら、見よう見まねでやっています。
応援してください。
それでは~
ウネリウネラの連載企画「映画から3・11を考える」はじまる
最近余裕がなく、あまり更新できずにいました。夫婦とも定職がないにもかかわらず、忙しいとは不思議なことですが、今のところとても充実しています。
お知らせですが、昨日から「マガジン9」というメディアでウネリウネラの連載企画がスタートしました。タイトルは「映画から考える3・11」。隔週で水曜日更新予定です。
首都圏から越してきた私たちは福島で暮らすうちに、震災と原発事故という問題を、あまりにも素通りしてここまできてしまったということを、ひしひしと感じています。
けれど、何も知らずにここまで来てしまった私たちにいやな顔ひとつせず、被災体験や原発と被ばくの問題などを、丁寧に解きほぐしながら教えてくれる人たちに、多く出会いました。
そのひとりが、福島市の映画館「フォーラム福島」の阿部支配人です。年間何百本という映画を観続ける映画館主であり、自らが被災者でもある阿部さんに案内人になってもらい、多くの人たちに、映画から3・11の問題を知ってもらいたい、というのがこの企画の趣旨です。
実際に私たちも阿部さんに選んでもらった作品を観て、解説してもらっていくことで、部分的にしかわからなかったことがようやくつながってきたり、そこからまたさまざまに新たな疑問が生まれては、それを話し合って…ということをくり返しながら、考え続けています。
震災と原発事故の問題で深刻なのは、問題への考え方の違いや、よく言われる「対立」以前に「知らないやつがわかったような口を聞くな」「軽々に話すべきでない」といったなんとなくの「雰囲気」だと感じます。そうした雰囲気をなんとか打開して、議論を深めたいという思いで始めた企画です。
敢えていえば、この企画は、震災や原発に関心がもてないでいる人にこそ届けたいと思いながら、試行錯誤して進めています。少し前の私自身も「関心がもてないでいる人」のひとりでした。「原発の問題は難しい」--そんなふうに思いながら、ここまで通り過ぎてきてしまいました。
私たちも何も知らないところからいまも勉強中ですし、必死で考えても理解し得ないこともあるという自覚を持ちつつ、みなさんと一緒に考えたり、話し合ったりしていきたいという思いです。どうか、読んでいただけたらうれしいです。
第1回目の今回は80年代の作品を取り上げましたが、今後は発災以後につくられた作品や、商業映画としては公開されなかった作品、海外の作品などのラインナップも予定しています。ぜひ、映画から3・11のことに触れてみてください。
ご意見やご感想、お問い合わせなど、お気軽にcontact@uneriunera.comへお寄せください。
私たちは「生まれてこないほうが良かったのか?」
パートナーの牧内昇平が哲学者の森岡正博さんにインタビューした記事が、昨日ビジネスインサイダージャパンに掲載されました。
森岡さんの表現はとてもクリアーです。深い内容を、非常にわかりやすく話してくださっています。
よければぜひ読んでいただけたらと思います。
また、ご意見、ご感想などありましたら「ウネリウネラ」お問い合わせフォームへお気軽にお寄せください。
お忙しいなかインタビューを受けてくださった森岡さん、ビジネスインサイダージャパン編集部のみなさん、いつも記事を読んでくださるみなさんに感謝します。
生まれてこないほうが良かったのか?
タイトルそのままですが、森岡正博さんの新刊『生まれてこない方が良かったのか?―生命の哲学へ』(筑摩選書)について書きました。
どうにもまとまらず(これでも3日間くらいかかっています涙)、ウネリには「やっぱり書くのやめようかな」などと弱気なことも言ったのですが、不完全でも書くのをやめてしまうよりは「出すべし出すべし」ということで、取り急ぎアップしました。
この件については、これからも時間をかけて考えていきたいと思います。
みなさんのお考えなども、「ウネリウネラ」サイトのコメント欄やお問合せフォームなどから、お気軽にお寄せください。
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「ウネリウネラ」は私自身のためなどに実験的に立ち上げたサイトですが、おかげさまで少しずつみなさんに読んでいただき、感想などもいただけるようになってきました。
今後は、みなさんのご意見や寄稿、企画提案など、双方向的なやり取りができたら…などと、ぼんやり考えていますので、ご意見お待ちしております。
いつも駄文を読んでいただきありがとうございます。