森の奥の樟の木
最近また、長田弘全詩集をぱらぱら開いています。
長田弘さんは福島出身。
「森の奥の樟の木」という詩は、『詩の樹の下で』という詩集に収録されているのですが、この詩集について長田氏は
この小さな本のモチーフとなったのは、
樹や林、森や山のかさなる風景に囲まれて育った幼少期の記憶だ。
と記しています。
「森の奥の樟の木」の一節を引用します。
微かな木漏れ日がちらちら揺れている。森のなかには尽きない時間がある。踏み迷うことのできる時間があり、すべもなく立ち尽くすための時間がある。
生きるとは時間をかけて生きることだ。人はどうして、森の外で、いつも時間がないというふうにばかり生きようとするのか。
私は時間をかけて、生きているだろうか。
森の外の世界で人は、踏み迷い、立ち尽くす人の存在を、認めているだろうか。
許せているだろうか。
そんなことを考えています。
森のあるまちで。