ウネラのブログ

元新聞記者ウネラの日記

ちびゴリラのちびちび

「ちびゴリラのちびちび」ルース・ボーンスタイン作/いわたみみ訳(ほるぷ出版)は、次男(現在5歳)が2歳の誕生日を迎えたときに、贈った絵本です。

絵本の紹介を書きたいと思い始めた時から、一番最初はこれと決めていた、大好きな本です。
好みのちがう8歳、5歳、3歳子どもたちみんなに好評だという、貴重な一冊でもあります。

ちびゴリラのちびちび

ちびゴリラのちびちび


この本は、はじめ、とにかく絵が気に入って選んだ本でした。

木の葉や背景の緑色、さるやへびの赤色など、随所に明るい色は使われているのですが、彩度が抑えられているからか、全体的に静かで落ち着いた印象です。
薄暗く不穏に感じられる色づかいでもありますが、そこに鬱蒼とした森の質感が表れているような気がします。

一方やわらかなタッチで描かれたどうぶつたちは、おだやかで楽しげな表情を浮かべています。自然界の薄暗さのなかにも、くつろげるような安心感をおぼえるのは、生き生きと大らかに描かれたどうぶつたちのまなざしが、みなとても優しいからかもしれません。

我が家の3人の子どもたちも、次々登場するどうぶつたちに釘づけで、クスクス楽しい笑いが起こります。

長男はおとなとこどものぞう、次男は、おとうさんの顔に届きそうなちっちゃいちびちびの手、三男は扉に描かれたちびちびの顔、とそれぞれにお気に入りの場面があるようです。

ただ、この本の魅力を絵画的な要素だけで語ることはできないと思っています。その内容が、シンプルかつストレートに、生きることの本質を問いかけてくるように感じるからです。

教え諭すようなことばが並んでいるわけではありません。むしろ説明的な記述はほとんど削がれています。驚くようなストーリーが展開するわけでもありません。

その中身は、
"ちびちびが生まれ、家族も森のどうぶつたちもみんなちびちびが大好きで、ちびちびは大きくなっていくけれど、大きくなっても変わらずみんなちびちびを大好きでいる"
ということに尽きます。

ただそれだけのことが多くの人の心をとらえて離さないのはなぜか、ずっと考えています。
30ページにも満たない短い絵本のなかで、ごく自然に描かれている「誕生への祝福」や「存在の肯定」が、読む人に深い安らぎを与えるのかもしれない。
どんどん大きくなっていくちびちびに歓喜する子どもたちを眺めながら、そんなことを思っています。

読むたびにずっしり存在感が増してくるような本です。